書籍出版の動機について / 牧野富太郎研究所

植物学者・牧野富太郎に関する人物研究、および伝承を目的としています。

牧野富太郎研究所について

『牧野結網補伝Ⅲ』(植物の神が生産した詩歌厳選・増補改訂版)出版動機

牧野結網補伝Ⅲ 植物の神が生産した詩歌厳選・増補改訂版

筆者は2013年(平成25年)4月に、『牧野富太郎の歌年譜』(非売品)を著し発行した。これは筆者の牧野富太郎研究十二年の成果第一弾としての試みであって、同時に2012年の牧野富太郎生誕150年を記念すべく著作でもあった。この時はこれまでに知られている牧野富太郎の歌、すなわち得意とする都々逸そして短歌や俳句、川柳などが、あちこちに点在しているため、これらを兎にも角にも一書にまとめることに専念した。そしてそれらを製作年号順に並べることで歌年譜と称し、これと牧野富太郎年譜とを対比することで、各々の時代で詠んだ歌の背景を探り、その時々の牧野富太郎の心情をつかむと共にその人物像をより深く研究することを目的に努めた。このことにより執筆途中に無知の新情報を発見することもあれば、これまでに知られていない牧野の活動背景が一層鮮明に浮かび上がったケースも出現した。同じような歌をいくつも作り、歳月をかけてより良き完成形に取り組む牧野富太郎の姿も垣間見られた。当然すべての作業が終了する頃には、牧野富太郎の生涯を通し、その隠れた鱗片を覗き見ることが出来た。従って歌年譜仕立てにすることで、個別の歌を点とすると、その点と点を結ぶ(つながり)ことができ、一本の線(流れ)と成し得たことは大成果であり、人間牧野富太郎の生涯を知る上で、歌を通じての牧野富太郎の人間性を解析する素材を見出す大事業を成し得たと自負している。しかしながら個々の歌に対する解説を後回しとして来たため、構成上の問題から読者には情報が飛び散り、今一歩牧野富太郎伝をうまく伝えきれなかったことは不本意な結果として課題を残した。出版後、筆者の不注意による多くの誤りや新情報出現により改訂を余儀なくされた部位も発見された。また、読者の意見も数多く寄せられた。これらのことを踏まえ、第二版として増補改訂版を発行することも検討したが、結論として『牧野富太郎の歌年譜』は絶版とすることに至った。

その後筆者は牧野富太郎研究所に席をおき、現在牧野結網補伝シリーズに取り組む中である。これまで2014年には、『牧野結網補伝Ⅰ』(畢生の二大事業と遺品のゆくえ)、『牧野結網補伝Ⅱ』(書簡解題・白井光太郎編)を発行した。そして本著は『牧野富太郎の歌年譜』を底本とし刷新を図ったもので、その『牧野結網補伝Ⅲ』(植物の神が生産した詩歌厳選・増補改訂版)とした。また、今回は牧野富太郎が生産した詩歌を、結網編、揮毫編、恋愛編、狂歌編、望郷編の五部構成に整理し、より多くの解説を加えてみた。これらのことは、第一弾として『牧野富太郎の歌年譜』があったからこそ成し得た業であって、全体像が見えてくることにより、筆者が思うままにこれらの歌を自由自在に操ることができるようになったからである。これからも牧野富太郎伝の大衆化に向けた更なる新企画に取り組みたい。

2014年11月13日           漉 川 葵 人

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